自衛隊への名簿提供30自治体のうち29市町村

 高校3年生の自宅に突然、自衛官募集の案内が届き、保護者から「どっから個人情報が漏れたの」「徴兵制につながるのでは」と不安の声が上がっています。紙媒体や宛名シールで自衛隊に名簿を提供した和歌山県内の自治体は今年度、30市町村のうち九度山町を除く29市町村にのぼることが和歌山県平和委員会の調べでわかりました。
 自治体による自衛隊への自衛官対象者名簿の提供は、安倍政権が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定した2019年の翌年、市区町村長が住民基本台帳の一部写しの提出が可能であると閣議決定し一気に広がりました。防衛相が各市町村に名簿提出を求める前の2019年2月に県内自治体のうち紙媒体で情報提供したのは30市町村のうち9市町村でしたが、その後増え続け、今年は29市町村。県平和委員会は「市民の個人情報やプライバシー権を保護する観点から自衛隊に名簿を提供することは許されないと考えています」と批判します。
 和歌山市が宛名シールで名簿提供を始めたのは2019年(翌年から紙媒体に変更)。「どこから情報がもれたのか」「何だか気味が悪い」などの相談が日本共産党和歌山市議団に寄せられました。当時、息子が高校3年生だった坂口多美子市議の自宅にも自衛隊からダイレクトメールが届きました。議会で追及。「4年前のその時は、情報提供しないでほしいという方は個別に名簿から除外できる除外申請を受け付けるのが当たり前だろうと思い最後まで詰めなかったのですが、今年になって市民の方からの相談で市が除外申請を拒否していることがわかりました」と振り返ります。県内でも海南市は除外申請の用紙を用意していますが、除外申請を受け付けるよう求める坂口市議に尾花正啓和歌山市長は「プライバシーの侵害にはあたらない」と拒否しました。
 和歌山市議団と新日本婦人の会和歌山市支部は6月、和歌山市内の高校前でシール投票を実施。回答した高校生37人の全員が、和歌山市が自衛隊に情報提供していることを知らず、除外申請する10人、しない16人、わからない11人でした。シール投票した高校生は「和歌山市とはいえ個人情報を勝手に渡すことはダメだと思う。除外申請があればする」と話しました。坂口市議は「自衛隊へ募集のために情報提供することは賛成だけども自分の情報は除外してほしいという生徒もいました。どこからどう情報がもれるのかわからない、気持ちが悪いという意見もありました。市長は情報提供しないでという市民の願いを受け止めるべきです」と要求しました。