和歌山県知事選の争点

 和歌山県知事選(10日告示、27日投票)に日本共産党新人の松坂みち子氏(66)、自民党に2度の推薦願を出しドタバタ劇の末に推薦された無所属新人の岸本周平元衆院議員(66)、ほか諸派新人が名乗りを上げています。問われているのは県民不在の自民党県政を継承するのか、だれ一人とり残さない県政に転換するのかです。

□自民党すり寄り
 和歌山カジノが4月にとん挫し、カジノに固執した仁坂吉伸知事が知事選不出馬の表明をするなか5月、国民民主党を離党した岸本氏が立候補を表明。会見でカジノについて問われ、国会でIR(カジノ)整備法に反対しておきながら、「中立の立場だ」とごまかしました。岸本氏が9月に議員辞職した翌々日、自民党県連は総務省官僚を推薦する方針を決定。ところが同県連の派閥争いが様々に報道されるなか10月、岸田首相が岸本氏に推薦状を手渡しました。岸本氏事務所開きには県選出の自民党国会議員4人全員があいさつするなど、同党との蜜月ぶりがあらわになっています。また仁坂知事も応援を表明しました。

□行き詰まる自民党県政
 統一協会と自民党の癒着、ウクライナ危機に乗じた大軍拡、異次元の金融緩和がもたらした急激な円安による物価高騰、無策のコロナ対策などのもと、岸田政権の支持率急落が止まりません。仁坂県政は国の悪政から県民を守る防波堤の仕事を放棄。その結果、1999年と2019年を比較すると和歌山県の1世帯あたりの年間収入は695・9万円(全国順位35位)から583.5万円(40位)に、月間消費支出は30万9700円(36位)から24万3000円(46位)に落ち込みました。しかし仁坂知事は、「最高の県政振興策」と県民の不幸の上に成り立つカジノにしがみつき、県議会によるカジノ否決後、退陣に追い込まれました。

□4つの転換
 松坂氏は、カジノについては「県はあきらめていません。カジノの火種を消し、物価高騰からくらしを守り、家計を応援する対策こそ、経済振興につながります」と力説。消費税を5%に戻し、賃金の底上げ、減らない年金などを国に求めるとともに「地域の中小企業や商店を応援し、地域でお金がまわる循環経済で地域の振興を」と訴えています。また農林水産県なのに県内食料自給率は27%と全国平均を下回っています。農林水産業を県の基幹産業に位置付け、住み続けられる地域づくりをめざしています。
 県はコロナ禍なのに病院ベッドをすでに1000床減らし、さらに2000床減らそうとしています。松坂氏は「県の仕事は福祉を守ること」と強調。病床削減計画の撤回や、県独自の福祉施策の実施をかかげます。
 県の子ども医療費無料は就学前まで。市町村の努力で中卒や高卒まで無料のもと県が対象を引き上げれば、さらに広がります。
 地方議員16年の松坂氏は当事者の声を聞き、和歌山市議会で初めて性的マイノリティ問題をとりあげました。選択的夫婦別性やLGBT法を国に求め、県職員の女性幹部を増やすことをかかげます。

 知事選で、だれ一人とり残さない県政への転換を訴える松坂氏は、「軍事対軍事は戦争への道です。憲法9条を生かした外交こそ平和への道。核兵器禁止条約への日本の参加を求めます」と何よりも平和を求めるなどの重点政策をかかげ奮闘しています。

□子育て支援3つのゼロ
 和歌山県はこの30年間で小学生が45%減少、中学生は51%も減りました。子どもの少ない今こそ、県独自の施策が求められています。松坂氏は、子どもも平均約2・7万円納税する国民健康保険の均等割を、国・県・市町村が補助をしてゼロにすることを提案。子どもの医療費無料が市町村の努力で高卒や中卒に広がっているのに、県の制度は就学前まで。松坂氏は県の制度として高校卒業まで医療費ゼロを訴えています。また、県と市町村が折半して学校給食の負担をゼロにするため全力をあげる決意です。

□くらし・地域をささえる
 路線バスなど公共交通機関の撤退により「買い物難民」などの状況が都市部も含めて県内各地に広がっています。松坂氏は買い物や通院への交通支援や、デマンドタクシーへの県補助などを提案。農林水産県としてふさわしい食料自給率や木材自給率を引き上げるため、家族農業、小規模林業・漁業への支援、学校給食への県産物利用率の倍化をめざしています。また中小企業を直接支援して最低賃金アップ・賃金底上げや、病院のベッド削減計画を撤回し、地域で切実な産科・小児科の拡充、医療・介護・保育・障害福祉労働者の待遇改善に県独自の助成制度をつくります。

□ジェンダー平等
 松坂氏は、県職員(知事部局)の女性比率が26%なのに、課長級以上が11%しかないことを批判。女性幹部を増やすことや、男女の賃金格差をなくす、「痴漢ゼロ」を政治の課題に、生理用品の学校トイレへの配置、ジェンダーレス制服の選択制などをかかげ、ジェンダー平等を訴えています。

□防災・被災者支援の充実
 年平均降水量4000ミリ近くの地域がある全国屈指の多雨地域の和歌山県は、2011年の紀伊半島大水害でも現れたように、防災・被災者支援の充実が求められています。松坂氏は、河川改修や要援護者の個別避難計画づくりの推進を表明。他県の災害見舞金を見た場合、秋田県60万円、兵庫県20万円に対し、和歌山県はわずか1万円。国の住宅再建支援金への上乗せや災害見舞金充実を訴えています。

□統一協会の被害から県民を守る
 反社会的カルト集団、統一協会の被害は和歌山県でも広がっています。統一協会とたたかって50年の日本共産党の候補者として松坂氏は「統一協会に解散命令を。被害者救済を」と訴えています。